「やりがい搾取」と熱心な社員教育の境界線
仕事に対する姿勢、向き合い方を熱心に指導していても、その育成が「やりがいを言い訳に労働者を搾取している」と非難されることがあります。
やりがい搾取とは
やりがい搾取とは、雇用主が従業員に「この仕事は給料以上のやりがいがある」と強く押し付け、言葉や態度で支配し、不当に安い給料や劣悪な環境で働かせる企業姿勢を非難した言葉です。
つまり、「思想教育」と「長時間労働」、そして「低賃金」という要素が組み合わさると「やりがい搾取」と批判されるかもしれないということでしょう。

やりがい搾取が起こる環境
長時間労働と低賃金という現象は、「業界の慣習」と「収益性の低さ」から起こります。徒弟制的考え方が残る業界では「若いうちは給料安くて当たり前」という価値観があります。また、収益性が低いビジネスモデルにおいては、儲けが少ない分を労働量でカバーしなければならないため、長時間労働になりがちです。
長時間労働と低賃金の状況下で、企業が労働力を維持する目的で何らかの思想教育を施した時、「やりがい搾取」の状況が生まれるということかもしれません。
熱心な教育とやりがい搾取の違い
熱心な社員教育と「やりがい搾取」の境界線は、収益性と労務管理(特に過重労働)に問題があることを認め、企業が改善に一生懸命取り組んでいるか否かにあるのではないでしょうか。儲からないビジネスを改善することから目を背けて、いたずらに夢や目標を説いてばかりいては、やりがい搾取と揶揄されても仕方ありません。
渋沢栄一が「論語と算盤の両方が大事」と説いたように、企業側が働くスタッフの長時間労働を食い止め、業界慣習より給与水準をあげる努力をしてはじめて、「仕事のやりがい」を説くことができると考えたほうがよさそうです。
社員の性格が原因になることも
一方で、労働環境だけでなく「社員の性格」がやりがい搾取の原因となることもあります。
Win-Win お互いに勝ち | Win-Lose 自分が勝って 相手が負ける |
Lose-Win 自分が負けて 相手が勝つ | Lose-Lose お互いに負け |
人間関係は図のように「win-win」「win-lose」「lose-win」「lose-lose」の四つに分けられると言われますが、「lose-win」つまり自己犠牲志向が強い社員は自分の能力以上に仕事を抱え、結果として長時間労働で疲弊してしまうことがあります。
会社は個別の社員の性格も考慮して
適宜ケアをしていく必要があります
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